◆口腔ケアとは

 口腔ケアとは,口腔全般に関わるケアすべてをいいます.特に嚥下障害患者さんにとって快適な口腔を維持することは,美味しく食事を摂ることはもちろん,肺炎(誤嚥性肺炎)の予防や嚥下機能のリハビリテーションにもつながります.
口腔の機能が低下すると,むし歯や歯周疾患の悪化、口臭、摂食・嚥下機能の更なる低下などの結果に結びつくことが多いのですが,こういった問題は口腔ケアをきちんとすることで改善することが可能です.





1.必要な道具
2.あると便利な道具
3.口腔ケアの症例
4.口腔ケアの際の注意点



寝たきり高齢者の口腔内

口腔機能の低下(舌の運動機能低下、唾液の分泌量の減少など)
が原因で、口蓋(上顎)や舌に唾液や痰、食物残渣がこびりついて
います。このような口腔内では肺炎の原因となる口腔内細菌の数
が非常に多くなります。そして細菌を多く含んだ唾液を誤嚥すること
が誤嚥性肺炎の一番の原因となります。特に嚥下障害患者さんの
場合、唾液を誤嚥する危険性が高いため、口腔ケアをおこたることが
ないよう注意が必要です。




◆口腔ケアの内容

・歯牙のブラッシング ・粘膜部の食物残渣の除去 ・粘膜の清拭とマッサージ
・舌のブラッシングと訓練 ・入れ歯の洗浄  など

◆期待できる効果

・むし歯や歯周疾患の予防  ・歯周疾患の改善  ・誤嚥性肺炎の予防  ・口臭の軽減
・口腔機能の改善(構音機能,摂食嚥下機能)



◆必要な用具

 ・歯ブラシ
 ブラシ部の大きさや硬さ,ハンドル部の形態を口腔内の状況や身体の残存機能と照らし合わせ選択します.
歯ブラシ                    ・工夫した歯ブラシ
 手指の機能低下の状況に合わせ,自立したブラッシングが出来るように工夫した歯ブラシです.
歯ブラシ2
 ・スポンジブラシ
 歯列と頬の間,舌面,口蓋部(口の天井)の食物残渣の除去に便利です.
スポンジブラシ  ・コップ
 縁がカットしてあるコップは首を後ろに傾けるのが困難な場合に便利です.
コップ
・吸い飲み,洗浄用シリンジ
 コップを使ってのうがいが困難な場合には,吸い飲みや洗浄用シリンジを使います.
吸い飲み,シリンジ ・粘膜用ブラシ
 粘膜部のブラッシングに用います.歯牙用のブラシより毛先が軟らかく,幅が広くなっています.
・歯間ブラシ
 歯と歯の間の食物残渣や,歯垢の除去に用います.
その他歯ブラシ
 ・ガーグルベイスン
 ベッドサイドでの口腔ケアの際に,うがいした水を吐き出すために用います.
ガーグルベイスン  ・義歯用ブラシ
 入れ歯の洗浄に用います.
義歯用歯ブラシ
・義歯用ブラシ
吸盤で洗面所にはりつけ,片手で義歯の洗浄ができます.
・電動歯ブラシ
 歯ブラシを器用に動かすことが難しい場合に便利です.
また,ブラシの背面を使って顔面や口腔粘膜のマッサージ
にも使用できます.
電動歯ブラシ
・カップ麺の空き容器を利用したガーグルベースン
周りにあるものは何でも利用して構いません! 
・簡易吸引器
インスタントコーヒーの空き瓶を利用した吸引器です.
手前のノズルを掃除機に接続します.
・簡易吸引器
市販されている簡易吸引器.吸引器をペットボトルに接続し使用します.詳しい説明はこちらで.
シースターコーポレーション
・くるりーなブラシ
口腔内にこびりついた痰などの除去に用います.



介護が必要な方の口腔ケアの際にあると便利な道具です.
口腔ケア用品取り扱い会社一覧
口腔ケアファインセット
照明開口器ホタル
吸引ブラシハッピー
株式会社エスコアール
http://www.escor.co.jp/index.html
吸引ブラシ
デンタルサポート
くるリーナ
オーラルケア
http://www.oralcare.co.jp/
携帯バキューム
   ケアクリニック
山中歯科医院 ケア事業部
http://www.juno.dti.ne.jp/~yoshikiy/care/index2.html
口腔清浄ティッシュ
  ふきふきタイム
和光堂
http://www.wakodo.co.jp/
     



口腔ケアの症例
初診
入院中の患者さんの初回訪問診療の際の
口腔内状態.
口腔乾燥が非常に強く,残留物の付着が
顕著で口臭も強かった.
口蓋の状況
付着物とイソジンガーグルの乾燥したもの
がこびり付き,潰瘍を形成している.
オーラルウェットで湿り気をあたえ,時間を
かけて付着物の除去をおこなった.
スポンジブラシに付着した口蓋の付着物 歯肉辺縁の炎症もあったため,軟らかい
粘膜用のブラシでブラッシングをおこなった.
口腔ケア直後の口腔内
口腔ケアに40分の時間を要した.
翌日の口腔
一見きれいにみえる.
しかし,口蓋の粘膜は乾燥が強い. 舌も乾燥が強く萎縮しており,乾燥した唾液の
再付着が認められた.
口腔ケア後,オーラルバランスを塗布. 塗布直後の口蓋粘膜の様子.
この患者さんは,2週間前に嚥下機能の評価をおこなっていたが,その時点で口腔ケアに若干
問題があったものの嚥下機能に問題はなく,水分摂取も可能であった.しかし,家族から口腔
ケアの要請があり再度訪問したところ,このような状態であった.この時点で絶飲食,開口維持
困難,水分摂取不可能,意識状態・全身状態とも低下しており,このような機能低下を招いた
大きな要因は口腔ケアの不徹底ではないかと考えられた.





◆口腔ケアが困難な場合の対処法

■口腔過敏があり,口を開けてくれなかったり,噛んだりする.
 長期間経口摂取や口腔ケアをしていなかったり痴呆があると,口腔内に異物が入ることに非常に敏感になり,口を固く閉ざして開けてくれなかったり,歯ブラシやスプーンを入れると,噛んだりされる場合があります.こういう症状を口腔過敏といい,食事介助や口腔ケアを難しくさせます.
口腔過敏を除去するには,とにかく口腔内に触れることです.過敏が強い場合には,まず指や口腔ケア用のスポンジブラシを使い,頬粘膜や歯茎の部分を優しくマッサージします.この時,噛まれないよう充分注意が必要です.歯牙が残存している場合には,バイトブロックを使った方がいい場合もあります.マッサージを行なう際には必ず臼歯部から始め、前歯にかけて行ないます.これは,前歯部の方がより刺激を感じやすいためです.最初は食いしばりが強いと思いますが,マッサージを続けていくうちに口腔の緊張が取れてきます.緊張が取れてきたら,口蓋部のマッサージを追加したり,指で行なっていたのをブラシに変えたり舌のブラッシングも行うなど内容を増やしていきます.一番効果的なのは,その方に関わる人達が,頻繁に行なうことです.口腔へ刺激を与える事は,例えば顔面麻痺や口腔機能の改善に繋がる場合もあります.

■歯肉の炎症が強いため,痛みや出血がある.
 このような場合,無理して歯ブラシを当てると,症状を悪化させたり,ブラッシングを嫌がられるようになります.まず,ごく柔らかい歯ブラシで落とせるだけの歯垢を除去し,炎症が治まってくるにつれ,しっかりとブラッシングするようにします.歯ブラシは歯肉の改善の状況に合わせて変えるようにします.

■うがいができない.
 唇をうまく閉じることが出来なかったり,軟口蓋(口の天井の奥の部分)の閉鎖がうまく出来ないと,水を口に含んで,ブクブクして吐き出すという一連の流れが出来ません.唇を閉じることが出来ない場合には,水を含んでもらってすぐに,上下の唇を指でつまんでブクブクしてもらいます.軟口蓋の閉鎖が不十分な場合には,水を口の中に溜めておくことが出来ず,喉のほうへ流れてしまいますから必ず下を向いてうがいをしてもらうようにします.



◆口腔ケアの注意点

■出来る部分は自分で行ってもらう.
 リハビリのためにも,不十分な部分についてのみ介護者が行うようにします.
 寝たきりの方の場合には,ベッドサイドの,手が届く位置に歯ブラシを置いたり,食後に歯ブラシを持たせてあげるなどし,食後は自分でブラッシングを行う習慣を付けてもらうようにします.


■誤嚥に注意する.
 口腔機能や嚥下機能の低下した方は,水を口に含んでうがいをして吐き出すという動作が困難な場合があり,吐き出すべき汚れたうがい水が間違って気管へ誤嚥されることがあり危険です.そのような時には,一回のうがい水の量を少なくしたり,出来るだけ前傾姿勢をとってもらうなどの配慮が必要です.




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