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嚥下食(5)

水分摂取ゼリー

水分摂取ゼリーとは

嚥下障害患者さんのなかでも、水分を摂取した時にむせるなどの症状で水分を摂取することが困難なかたは非常に多く見受けられます。また、むせるのが分かっているために、水分を摂りたくても、自分で制限されておられる方も多いようです。そのような方のために液体を、ゼラチンなどのゲル化剤を用いてゼリー状にすることで、固形物として摂取できるようにしたものが水分摂取ゼリーです。


水分摂取ゼリーの特徴

水分を固めるためのゼラチンには、口腔内体温で表面が溶解するという特徴があります。表面が溶解することですべりがよくなり、咽頭への送り込みが容易になります。同時に内面は固形を保っていますので、ゼリーは口腔、咽頭の形態に合わせ、バラけることなく、変形しながら食道へと送り込まれます。また、もし咽頭部にゼリーが残留したとしても、体温で溶解するので窒息の危険性は小さくなります。
ゼリーの硬さ(強度)はゼラチン濃度に比例し、溶解のスピードは逆に反比例します。濃度を高くすれば硬くて溶解しにくいぜりー、濃度を低くすれば軟らかくて溶解しやすいゼリーができあがります。通常、水分300ccに対してゼラチン5g(1.6%濃度)のゼリーが推奨されていますが、どの程度の硬さのゼリーがいいかは個々の患者さんによって異なりますので、どの部位にどの程度の障害があるかによって、その患者さんの状態に合った水分摂取ゼリーを作るとよいでしょう。


水分摂取ゼリーの作り方

◆お茶ゼリー

緑茶には抗菌作用、腸内細菌叢の改善、排泄の改善、ガン、老化の抑制などの有効性があります。また、食物を嚥下した後にお茶ゼリーを嚥下(交互嚥下)することで、咽頭部の残留物を除去する働きもあります。

材料 お茶抽出液 310cc / ゼラチン(パウダークイックタイプ) 5g (1.6%濃度)
作り方 濃い目のお茶抽出液(60℃以上)300ccに粉ゼラチン5gをダマにならないよう溶かし、型に流しいれ固める。

注)1 この濃度で作ると,やや固めで溶けにくいゼリーができます。口腔期の障害が重度で、咽頭への送り込みが困難な場合には、お茶の分量を増やして、やわらかめのゼリーにしたほうがよいでしょう。ただしその場合、口腔内での溶解のスピードが早くなるので、咽頭期の障害が重度で、なかなか飲み込みが出来ない方の場合、ムセや誤嚥の原因になることがあります。そのような時には、ゼラチンではなく、増粘剤で水分にとろみを付ける方法もあります。

注)2 お茶抽出液は、お茶を抽出する前のお湯の量で計量するのではなく、お茶を抽出した後の分量で計量してください。
ゼリーは固まるのに時間がかかるので、前もって作っておくほうが良いでしょう
お茶

◆その他のゼリー

お茶は毎日飲むには適した飲料ですし、様々な有効性も確認されています。しかし、いつもお茶ゼリーばかりだったら飽きてきますし、特に嚥下障害患者さんは、食べることの出来る食品の物性の幅が非常に狭いので、味で変化を付けることは大切です。そのような時にはお茶ばかりではなく、紅茶やコーヒー、牛乳など、患者さんの好みのものでゼリーを作ると良いでしょう。また、ゼリーに味と風味を付け美味しくすることで、飲み込みやすくもなります。

【いちごシロップゼリー】
材料 お湯 310cc / ゼラチン(パウダークイックタイプ) 5g(1.6%濃度)、
イチゴシロップ 1cc / ストロベリーエッセンス 少々 / 砂糖 12g(大さじ1 1/2) 
作り方
  1. ボールに60℃以上のポットのお湯を入れる。
  2. 砂糖を加え、ゼラチンを振り入れてよく混ぜる。
  3. シロップとストロベリーエッセンスを加える。
  4. 粗熱をとって器に流す。
  5. 冷蔵庫で冷やし固める。
 ※シロップはイチゴ以外にも、好みのものを使ってかまいません。

注)1 シロップゼリーの場合も、患者さんの障害の程度に合わせ固さを調節します。

注)2 いずれのゼリーの場合も室温で溶解するので、直前まで保冷しておく必要があります。
ゼラチン以外の材料として、寒天とゼラチン両方の特性を併せ持ったイナゲルN−65という製品があります。この製品はゼラチンに似た食感を持ちながら、温度による変化を受けにくいため、ゼラチンと比較した場合溶解のスピードが遅くなります。
いちご


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