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嚥下食(4)

テクスチャー調整食品

嚥下障害患者さんへの食事には、トロミをつけたり、ゼラチンや寒天で食材を固めたりしてテクスチャーを調整することがよくあります。テクスチャーを調整するための食品にはいくつかの種類がありますが、患者さんの状態、調理の形態、そしてそれぞれのテクスチャー調整食品の特徴をよく理解して使い分けることが必要です。

トロミを付けるための食品

片栗粉 ジャガイモの澱粉が多く使われる。水で溶いてトロミをつけるが、必ず煮たてることが必要。時間の経過や温度変化により離水する。 
葛粉 片栗粉と比較するとやや割高であるが、安定したトロミがつく。片栗粉と同様に加熱が必要。
コーンスターチ とうもろこし澱粉。片栗粉と同様に使う。
小麦粉 溶かしバターと1対1で炒めて、スープやグラタンに使う。
増粘剤 でんぷん、加工でんぷん、デキストリン、ガム等の食物繊維などで出来ている。熱い物や冷たい物に関係なく、混ぜるだけでトロミを付けることができる。加熱は不要。

水分など咽頭への送り込みのスピードが早い食材を摂取する場合、トロミを付けることにより食材のスピードをコントロールすることで、食材を食道へと送り込むことがしやすくなります。また、食材を細かく刻んだ場合にも、汁気とトロミを加えることで、随分と食べやすくなります。しかし、トロミをつけすぎるとベタベタ感が強くなり食感を損なうだけでなく、かえって嚥下し辛くなってしまうので注意が必要です。トロミを付けるための材料としていくつかの食品がありますから、それぞれの特徴をよく理解して使い分けることが必要です。

その他のテクスチャー調整食品

マヨネーズ 刻んだり潰したりした食物に、まとまりや滑らかさを付けたい時に便利。
生クリーム マッシュ状の食品に軟らかさ、滑らかさを足したい時に使用。
油脂 サラダ油、バター、マーガリン等を混ぜることにより、食品の滑りがよくなります。

増粘剤の特徴

増粘剤とは、混ぜるだけでトロミを付けることのできる、でんぷんを主原料にした食品です。

長所 短所
  • 加熱調理がいらない。
  • 冷たい物にも温かい物にも溶ける。
  • 粘度の調整が簡単。
  • 短時間で増粘効果が得られる。
  • 経時的変化が少ない。
  • 量が多いと、口腔内や咽頭にべたつきやすい。
  • 使う量によっては味を損なうものもある。
  • 食感が好まれない場合がある。
  • 食材との相性がある。

◆各種増粘剤

各種増粘剤 各メーカーから、販売されている各種増粘剤。
一袋2g〜8g入り。
このようなパッケージの他にも、大袋入りや、缶入りも販売されている。


固めるための食品(ゲル化剤)

ゼラチン 動物の骨や皮のコラーゲンで体温で溶け、消化、吸収される。そのなめらかなゼリーは経口摂取開始時によく使われる。
寒天 紅藻類、てんぐさ、おごのりなど植物由来の素材。腰を弱くしたもの等色々な種類がある。使う量や固める素材によっては、嚥下障害が重症でなければ良いようである。
カラギーナン 紅藻類、つのまた、すぎのりが原料。嚥下障害食にも使われている。他のゲル化剤との混合により程よいテクスチャーを調節できる。
ペクチン 果汁搾汁かす、柑橘類の果皮から作られる。弾力がありなめらかであるが、使う量や固める素材によって調整する。障害が重たくなければ使える。

◆寒天の種類と物性(ゲル強度と分子量)
寒天の種類と物性(ゲル強度と分子量)

イナゲルN-65、介護食用ウルトラ寒天、イナアガーL
  • イナゲルN-65
     ゼラチン食感でありながら、ゼラチンより温度による物性変化が少ない。   
  • 介護食用ウルトラ寒天
     通常の寒天より腰が弱い。常温で硬化する。
  • イナアガーL
     介護食ウルトラ寒天よりすべりが良い。常温で硬化する。 
ゼリー食の素、ゼラチンパウダー、かんたんゼリーの素
  • ゼリー食の素
     ゼラチン、ペクチンが主原料。
     食材に混ぜ、冷蔵庫で冷やし固める。10℃以下でゼリー状になる。
  • ゼラチンパウダー
     60℃以上の液体に直接振り入れ、混ぜて溶かす。1袋で200mlのゼリー液が出来る。
  • かんたんゼリーの素
     ペクチンとカルシュウムの2材を混ぜることにより硬化する。


天然ゲル化剤の特徴

資料提供:伊那食品工業株式会社
  寒天 カラギーナン ゼラチン ペクチン
原料 海藻(天草・オゴノリ) 海藻(スギノリ・キリンサイ) 牛・豚の骨や皮 柑橘類の果皮
主成分 ガラクトース
3.6-アンヒドロガラクトース
ガラクトース
3.6-アンヒドロガラクトース
ゼラチン蛋白 ガラクツロン酸メチルエステル
形状 粉末状、棒状
フレーク状、糸状
粉末状 粉末状、板状 粉末状、液状
ゲルの性状 固いさくいゲルを作る。トコロテン用の粘弾性に富むゲルもできる。 κタイプはさくいゲルを作る。ιタイプは軟らかいゲルを作る。 軟らかい粘りのあるゲルを作る。 糖、酸との結合により弾力のあるゲルを作る。
分散性 水に容易に分散 砂糖と粉混合必要 水に膨潤させる 砂糖と粉混合必要(粉末)
ペクチン液とカルシウム液を混合
溶解性 煮沸溶解。溶解性のよい易容性寒天もある。 80℃以上の熱湯に溶解。 50〜60℃の湯に溶解。 煮沸溶解。
凝固温度 35℃〜45℃ 30℃〜75℃ 18℃〜20℃ 65℃〜85℃
熱可逆性 再溶解可能
(80℃〜100℃)
再加熱可能
凝固温度+5〜10℃
再加熱可能
熱劣化注意
再加熱可能
凝固力低下する
耐熱性 あり あり(高温やや弱) なし あり
耐酸性 弱(使用方法により酸性で使用可) 弱(使用方法により酸性で使用可) 弱(使用方法により酸性で使用可) 強(pH2.5〜3.8でゲル化)
冷凍解凍復元性 よくない 一部よい よくない 高糖度ゲルよい
耐酸素性 あり あり なし なし
使用濃度 0.1〜1.2% 0.3〜1.0% 2〜4% 0.3%以上
食品添加物表示 食品 食品添加物 食品 食品添加物


ゼラチン、寒天の特徴の比較

ゲル化剤として、最も使われる頻度の高いゼラチンと寒天との比較

ゼラチン 寒天
  • 適度の軟らかさと弾性がある。
  • 変形しやすい。
  • 食隗が均一。
  • 口腔内体温で溶解する。
  • 食品の美味しさを損なわない。       
  • 滑らか。
  • 事前に作っておく必要がある。
     (24時間で安定)
  • 常温では凝固しない。(10℃以下で凝固)
  • 温度管理が難しい。 (室温で溶解する。)
  • 温度によって形状が変化する。
  • 硬化後の濃度の変更が不可能。      
  • 室温で凝固する。
  • 温度管理が容易。
  • 温度による形状の変化が少ない。
  • ゼラチンと比較した場合、短時間で凝固が可能。
  • 食塊形成しにくい。
  • 変形しない。
  • ばらけやすい。
  • 硬化後の濃度の変更が不可能。


その他のゲル化剤(●イナゲルN-65)

イナゲルN-65は、ゼラチン、寒天、両方の特徴を併せ持ったゲル化剤です。
ゼラチンに似た軟らかさ、弾性、変形しやすさを持ちながら、温度による変化を受けにくく、形状の変化が少ないのが特徴です。

イナゲルN-65グラフ

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